論文紹介(2)

「Variation of the Implied Volatility Function (IVF) and Return Predictability」
(Paul Borochin, Yanhui Zhao, 2016/1/20)

個別株取引では少し珍しいのですが、
インプライドボラティリティ(以下IV)に基づいた月次リターンの予測に関する論文です。

IVはオプション価格から逆算される将来の予測ボラティリティです。
過去の値動きから算出されるヒストリカルボラティリティとは異なり、
現在における投資家のセンチメントがふんだんに織り込まれています。

当然ですが、IVはオプションが存在しないと計算することができません。
個別株のオプションはメジャーな金融商品ではありませんが、
現在東証には216の個別株・ETFのオプションの取り扱いがあります。

この論文では以下の3つのボラティリティスプレッドについて、翌月のリターンの予測力を検証しています。
これらのスプレッドは、投資家のセンチメントを表す代理変数となっています。
各スプレッドの持つ詳細な意味合いは、論文の本文を参照してください。

①O/Aスプレッド:OTMプットのIVとATMコールのIVのスプレッド
②C/Pスプレッド:ATMコールのIVとATMプットのIVのスプレッド
③I/Hスプレッド:ATMコールのIVとヒストリカルボラティリティのスプレッド

※OTM:Out of The Money、ATM:At The Money



IVが計算できる銘柄群について、
これらのスプレッドの標準偏差の大きさでQ1(小)からQ5(大)まで5つのグループに分位します。
グループQ5とグループQ1についてロングショートポートフォリオを組んだとき、
以下のような累積リターンが得られます。

160422-1.png


リターンが安定して伸びていることが分かります(安定しすぎているのが逆に気になりますが)。
リターンの予測力はグループQ5(スプレッド標準偏差の大きいグループ)で顕著となるようです。

前回も述べたように、この手の論文は決定係数やS/Rを記載するだけのものが多いのですが、
このようにファクターリターンが記載されていると、読み手にとってありがたく感じます。

投資家のセンチメントが有用なファクターになりうるという実例の1つでした。