HFT・アルゴリズム(1)

アルゴリズムと聞くと嫌なイメージを持つ方が多いと思います。

機関投資家の専売特許であり、有利な指値を奪い、ときには市場をクラッシュさせる。
アルゴリズムやHFTが出現し始めた頃はその手法は全くのブラックボックスであり、
上記のようなイメージが定着したものです。
しかし最近では、株式市場、特に国内の株式市場においては、
これらのアルゴリズムはほぼ無害であることが分かってきています。
(昔は私も有害であると考えていました)

東証の高速取引システムであるアローヘッドは2015年9月にリニューアルされました。
このようなシステムの高速化に伴い、アルゴリズムやHFTによって不利益を被ることを懸念する人もいますが
それは全く見当違いです。


アルゴリズムとは物事の手順を明確化したものを指し、HFTは単に高速・高頻度で取引することを指します。
言葉の意味だけを考えると、HFTはアルゴリズムの1つと言えます。

マーケットにおけるアルゴリズムとHFTは、その目的から区別されています。

アルゴリズムとは単に注文執行のプロセスを機械化したものであり、
収益を狙うものではなく執行に伴うコストを削減することを目的とします。
東証の注文の7割はアルゴリズムと言いますが、機関投資家が発注作業をわざわざ手作業で行うわけがなく、
これは当然のこととなります。

これに対して、HFTは細かな注文を繰り返すことで収益の積み上げを狙うものです。
HFTの収益の源泉は株価変動によるキャピタルゲインではなくマーケットメイクによるリベートが主となります。


アルゴリズムの目的は大きく分けて2つあります。

(1)大口注文のマーケットインパクトを緩和する

  機関投資家の株式保有数は個人投資家の比ではなく、
  一度に注文を出すと板に莫大な気配が出現し、当然ながら取引にはなりません。
  よって大口注文は小口に分割し、少しずつ消化する必要があります。
  これがアイスバーグ注文に代表される、マーケットインパクトを抑制するためのアルゴリズムです。

(2)ベンチマークからの乖離を抑える

  分かりやすい例で説明すると、ベンチマークを終値基準としている場合です。
  この場合、小口注文の平均約定価格が終値に近づくよう注文しなければなりません。
  マーケットインパクトの都合で成引での一括注文はできないため、
  市場の閉まる数分前からアルゴリズムが動き始め、少しずつ注文を消化することになります。
  約定平均価格を終値に近づける戦略をMOC、出来高加重平均に近づける戦略をVWAPと呼びます。

これらの注文は指値注文であり、成行注文は使われません。
指値注文とする理由は単純で、スリッページやスプレッドによる損失を抑えるためです。
自らの指値はコントロールできても、他の参加者の指値はコントロールできないため、
成行での連続発注は思わぬコストに繋がる可能性があります。


どれだけ注文の高速化が進もうと、市場は価格優先・時間優先の原則に従うため、
同値の既存の指値の先頭に割り込まれることはありません。

スプレッド間にある空白の最良執行価格に割り込まれることは考えられますが、
それが嫌であれば個人投資家のメリットを生かして成行注文を出せばよいだけの話です。
日本の株式市場はフロントランニングできない構造であり、
アルゴリズムによる成行注文の察知→最良気配買い占め→最良気配売り付けはできません。


このようにアルゴリズムは「ほぼ」無害なのですが、「ほぼ」とわざわざ付ける理由として、
アルゴリズムの中にはアイスバーグ注文などの執行に際して「見せ板」を使う悪質なものがあるからです。
ただし見せ板はアルゴリズムの問題ではなく、モラルの問題であることは言うまでもありません。
東証がきちんと取り締まれば良いだけの話です。